心臓病による死亡の多くは病院の外で突然起こることから「心臓突然死」と呼ばれている。国内で心臓突然死による死者数は年間約五万人といわれ、人口の高齢化に伴い増加傾向にある。心臓突然死の実態や特徴、少しでも数を減らすための心肺蘇生(そせい)を普及させる取り組み、医療現場の課題を紹介する。 (福沢英里) 今年三月に開かれた東京マラソンで、ランナーとして参加していたタレント松村邦洋さんは意識を失って倒れ、病院に搬送された。急性心筋梗塞(こうそく)による心室細動が原因だった。 「心室細動は不整脈の一つ。心臓がけいれんしている状態。放置しておけば五〜十分程度で完全な心停止、つまりけいれんも無くなり、心臓の拍動も止まってしまう」。こう説明するのは、京都大保健管理センター(京都市左京区)の石見(いわみ)拓助教。 心臓は右上から右心房、右心室、左上から左心房、左心室という四つの部屋に分かれている。左右の心房と心室が交互に収縮、体全体に血液を介して酸素と栄養を送り続けるポンプの役目を果たしている。 心臓が収縮するために、右心房にある発電所の「洞(どう)結節」から電気の興奮が心房に伝わって収縮。心房と心室をつなぐ「房室結節」を通って、左右の心室の分岐点「ヒス束(そく)」へ、さらに心室への通り道「脚(きゃく)」、末端の「心筋」へと伝わる。 不整脈は心臓の拍動が早くなったり遅くなったり、またはそのリズムが乱れたりするものをいい、心筋の異常な興奮や、電気の興奮が伝わる洞結節から心筋までの「刺激伝導系(電気の流れ)」がうまく機能しなくなった結果、起こる。心室細動は拍動が非常に早くなるパターンで、数秒でめまいを起こし、十秒前後で意識を失う。数分続くと、脳障害を起こし、死に至るという危険な不整脈だ。 ◇ 心臓突然死の六割以上は心筋梗塞、狭心症といった虚血性心疾患が原因と考えられている。「動脈硬化や高脂血症、高血圧といった危険因子があれば、より発症しやすくなる」と石見助教は指摘する。 心臓突然死の頻度は中高年に多い。しかし、球技中にボールが胸を直撃した衝撃のため、心臓がけいれんして心停止を起こす「心臓震盪(しんとう)」は子どもにも多いので注意が必要。運動による負荷や精神的ストレスが引き金となる場合もある。年齢に関係なく、いつでも誰でも起こり得る。 前兆として、冷や汗▽締め付けられるような胸痛▽吐き気▽一過性の意識消失−といった症状を見逃さないこと。突然死の恐れのある不整脈を指摘されたら早めに受診し、心電図など詳しい検査を受けることも重要だ。しかし前兆が無く、突然、心室細動になり、倒れてしまうことも多い。 心室細動から命を救うには、自動体外式除細動器(AED)を用いた心肺蘇生を速やかに行い、電気ショックを与える必要がある。電気ショックが一分遅れると救命率は10%下がるといわれる。 大阪府は一九九八年五月から、救急隊が蘇生にかかわった、府内で発生したすべての病院外心停止のデータを記録、集計する「ウツタイン大阪プロジェクト」を実施中。心臓病が原因(心原性)で心停止し、倒れるところが目撃された患者の救命率は年々上昇している。 しかし、心停止した患者に現場に居合わせた人がただちに心肺蘇生を始めると救命率が二〜三倍上がるが、実際に心肺蘇生が行われているのは四割程度にすぎない。石見助教は「社会復帰できた患者は10%台にすぎず、まだまだ不十分だ。一般市民の心肺蘇生の実施率をさらに上げなければならない」と強調する。 http://www.tokyo-np.co.jp/article/living/health/CK2009080702000061.html
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