| ◇九州・山口の4年制大で唯一 事故現場などに駆けつけ、病院に到着するまで患者に適切な処置を施す救急救命士。その名の通り、1人のかけがえのない生命を救う。東亜大(下関市)医療工学部は九州・山口の4年制大学で唯一、救急救命士の養成コースを設ける。「病院前救護のスペシャリスト」を目指して学生、講師陣が一丸となって日夜奮闘中だ。【新里啓一】 水たまりのように広がる真っ赤な血のり。地面でうめく男性に救急隊員たちが慎重に話しかけながら、症状を把握する。 実は、救急救命士を志す大学生や専門学校生が日ごろの練習の成果を競う大会「西日本学生救急救命技術選手権」の一場面だ。昨年12月に東亜大であり、5校9チームが参加。07年から東・西日本別に開催しており、東亜大は運営設備が整っていることなどから西日本大会の会場となっている。東亜大の「ASIA救急隊」は3部門のうち切り傷などを負った患者を運ぶ「外傷想定」で優勝、総合2位の好成績を収めた。 救急救命士は、91年の救急救命士法施行に伴って誕生。現在、全国で約3万3000人の資格者がいる。 当初は現場経験を積んだ消防署員や看護師が資格取得を目指すケースが多かったが、近年は養成コースを設ける4年制大学や専門学校も増えつつある。全国救急救命士教育施設協議会(大阪市)には現在28校が加盟。大会には一線で活躍中の救急救命士も審判員などを務め、教育機関と現場の橋渡しの場にもなっている。 東亜大では養成コースの専任講師4人のうち、2人が救急救命士の資格を持つ。 その一人、西園与之(ともゆき)講師(41)は、鹿児島県阿久根市の消防局で約10年間、現場でキャリアを積んだ。心肺蘇生などの応急処置を日々慌ただしくこなす中で、「患者一人一人の症状に臨機応変に対応できず、再勉強の必要性を感じていた」。東京都内の大学院で医学理論を学び直し、2年前から東亜大で後進の育成に励んでいる。 1月のある日の午後、キャンパスの一室で2年生の実習が始まった。背中にオレンジのラインが入ったおなじみの紺色の活動服に着替えて整列。普段は柔和な西園講師の表情からも笑みは失せ、点呼一つでも気の緩みを許さない。血圧や脈の測定から始まり、AED(自動体外式除細動器)の実践まで、学生たちは目標も明確なためか、協力しながら次々とこなした。 学生たちは2年前、独自に救急技術サークル「Life」を設けた。約30人が所属。週2回の勉強会の他、地元のマラソン大会でランナー救護のためにAEDを背負って走り回るボランティアなどもしている。 現部長で3年の秋山一秀さん(21)は静岡県島田市出身。地元の高校で野球部の投手をしていたが、ある日、打球が頭を直撃、マウンドで意識を失った。その際に「救命士の方が言葉遣いなどもやさしく救護をしてくれて」、その姿にあこがれを抱いた。「設備が整っているから」と東亜大に迷わず入学、現在のキャンパスライフは「勉強一筋です」ときっぱりだ。 03年に設立されたコースではこれまでに1、2期生のうち、24人が救急救命士の資格を手にした。西園講師は「有資格者の活動の場は現状ではほぼ消防署に限られるが、いずれ交通機関や学校現場など社会のさまざまなフィールドで救急救命士が活躍する時代が来るはず」と将来を見据えている。 http://mainichi.jp/area/yamaguchi/news/20090123ddlk35040354000c.html
|