アジア最大規模となる「東京マラソン」は2月18日、フルマラソンに2万5000人、10キロの部には5000人のランナーを迎えて開催される。トップ選手と市民ランナーが同じ舞台を共有する都市型マラソンは国内初の試み。ボランティアだけでも約1万人の支援を受けるレースを1週間後に控え、大会を支える人々の汗もにじむ。(金子昌世、国府田英之)
コースに苦心
足かけ3年近く、都内を自転車で走り回った。どのくらいの距離を、何日走ったのかは覚えていない。ただ都から支給された「ママチャリ」は乗りつぶした。それほどの重労働だった。
コースの原案作りを任された都オリンピック招致本部企画部の早崎道晴副参事(51)をまず悩ませたのは思惑の違いだった。都としては「観光名所を入れたい」。「記録の狙える平坦(へいたん)なコースを」とは日本陸連。警視庁は「交通規制の影響の少なさ」を重視した。板ばさみとなった。どうしたらいいのか、コース探しが始まった。「平日に自転車で職場を抜けるのがなんとなく気まずくて」と土日を利用。テレビ映りを意識し「歩いて風景を吟味した」こともあった。
ペダルをこぐ脚で感じたのは、都内は南北に坂が多いということだった。スタート地点の都庁から名所を織り込みつつ、ほぼ東に進むコースにたどり着いた。その上で道路の一方だけに駅出入り口があると、道路封鎖中は反対側から利用できないので「なるべく歩道橋のある道を選んだ」。沿道の商店などに協力も訴えた。「観光的にプラスということで理解はあり、基本的には反対というわけではなかった」と胸をなでおろしたことも。3万人のランナーを迎える真新しいコースは努力の結晶だ。
ボランティア1万人/AED隊スタンバイ
それでも不安は尽きない。「回を重ねて作ったのでなく、一気に実現させた大会。ランナーに加え、ボランティア1万人、スタッフ1万人と、ひとつの市ほどの人数をコントロールしないといけない。当日に何が起きるか…」。だからこそ「交通規制を含め周囲がいろんな我慢を背負っていることを、ランナーにも分かってもらいたい」。“苦労人”はこう願ってもいる。
自転車で救護
「助けられる命は助けたい。そのために待つのでなく、行く救護態勢が必要なんです」。国士舘大大学院スポーツ・システム研究科修士2年で救急救命士の前住智也さん(24)は訴える。今大会の医療態勢を支える「モバイルAED(自動対外式除細動器)隊」の指令塔役だ。
市民マラソン中に亡くなる原因の多くが心臓の疾患で、突然の心停止は「心室細動」と呼ばれる不整脈が原因といわれる。その治療に有効なのが電気的除細動(電気ショック)だという。モバイルAED隊とは、事故現場に素早く到着できるようにAEDを携帯した救急救命士の自転車隊なのだ。国士舘大大学院の田中秀治教授は「3分以内に除細動を行わないと、AEDの効果はない。安全にレースをしてもらうために最初の3分をどうするか、いかに早く駆けつけるかを考えたとき自転車が一番だった」と説明する。「待つ」救護から「行く」救護を可能にしたのが自転車だった。
3万人が走る今大会では、2人1組で10組のAED隊が3人の医師の指導の下、約2.5キロごとをカバー。連絡には携帯電話を使い、「事故発生」の一報を受けた本部は、事故現場に一番近いAED隊に連絡、応急手当てを行う。さらに救急救命を学ぶ国士舘大の学生52人がAEDを持ち、5キロ以降のコース沿いに3人1組で待機する。待機する後輩たちに、前住さんは「現場に触れることで必ずモチベーションが上がると思う。こうした大会を知り、救急救命士になる学生が増えれば、より多くの大会をサポートできるようになる」と期待を込めている。
■メモ スタート地点とゴールが異なるため、ランナーの荷物は11トントラック約40台でゴール地点となる東京ビッグサイトへと運ばれる。また給水所も1カ所だけで約250人が携わるとも。さらに3万人の大会を想定し、約2年前からボランティアの“リーダー”役を約350人育成するなど、「東京」はさまざまなサポートを受けて第一歩を踏み出す。
有森“ラストラン” 「はってでもゴールする」
東京マラソンでプロランナーとしての最後を飾る有森裕子(40)=リクルートAC=が11日、米国から成田空港着の航空機で帰国。“けじめ”のレースに向け「最善の走りをしたという思いでゴールしたい」と決意を込めた。
練習を再開して2年。フルマラソンとしては6年ぶり、12度目のレース。全盛期と比べれば、「こんなにコントロールできない痛みが出るとは…、体を戻すには2年は短かった」という。それでも「プロランナーという(道の)始まりをつくった自分としては終わりもつくらないといけないと思った」と打ち明けた。
練習拠点の米ボルダーは年末年始に大雪に見舞われ、サンディエゴに拠点を移したこともあって「思っていた3割程度の練習」で臨むが、「はってでもゴールします」と視線を上げた。
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